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北海道新幹線 「5時間1分」 の内訳 [北海道]

2012/07/01

整備新幹線の北海道・北陸・長崎の、3線ならぬ、2線1プロジェクト(長崎はどちらかといえば車両開発) の着工が、だらだら~っと正式認可されました。だらだらというのは褒め言葉です(謎)。この案件に関しては、なにかと 「看板先行」 が多かった現政権らしからぬ慎重な進め方だったように見えました。(各地元から見れば無駄な遠回り以外の何者でもなかったわけですが)

賛否についていえば、メディアを中心としたそれはいつの時代もイメージ先行で、分母を考えない議論ばかりが目立ちます (逆に言えば分母を意図的に無視しないと営利メディアは商売が成り立たない)。今回は LCC の拡大をネタに不要論を説くメディアが多いようですが、賛否対立の構図自体は前世紀から何も変わっていません。それならばメディアよりも、実数値をもとに真面目に分析なり予測なりして働いている (地理的よりも社会的) 当事者たちの声に耳を傾けたほうがいいでしょう。

ちなみに LCC (格安航空会社) については実は今年開かれていた新幹線の検証委員会でも言及されていたようですが、いかんせん国内ではまだ始まったばかりなので (おそらく数量的に) 無視せざるを得なかったようです。単に格安ならば早割のほうが歴史があるし統計の年度にも十分食い込んでいます。
個人的には、成田や茨城空港が LCC全盛になっても、羽田までが LCCで占有されるとは考えにくいですし、また、仮に10年くらい後に羽田を含む大半の空路が格安となり、他の長距離交通が壊滅的状況になったら、その時は工事の中断や変更を考えればいいだけのようにも思います。


前置きが長くなりましたが、表題の件です。
 

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JR 「事故」 報道 [北海道]

 
◎ 今年の JR北海道管内 列車トラブルの “報道分”

 ※ 5/27以前はほぼ道新の記事より。荒天など外的要因による運休は除く

12/20 高架の腐食配管落下・千歳線
12/27 停車駅350m行き過ぎ・占冠
12/27 ホーム入らない最後尾のドア開ける・札幌
12/31 臨時とかちドア不具合・石勝線
12/31 普通列車ドア不具合・手稲
01/08 車両故障・森 / 停止位置超過70m・深川
01/14 ブレーキ、ドア不具合・石狩太美
01/19 貨物列車と排雪車が接触・深川
02/06 踏切設定ミス・七重浜(24年以上放置) 他5ヶ所
02/09 雪運搬台車脱線(荷崩れ)・小樽
04/05 S北斗ブレーキ不具合・国縫
04/17 普通列車ドア故障・美唄
05/12 深川-旭川間 送電ストップ 12本運休
05/13 踏切ポールが架線に接触 (強風?)
05/24 石勝線貨物列車 停止信号のまま発車→ATS作動

05/27 石勝線 Sおおぞら脱線火災

06/06 S北斗で白煙・伊達
06/08 Sおおぞら異音で停車
06/10 「千歳線運転士居眠り(6月8日)」
06/12 SおおぞらATS故障・南千歳
06/12 S北斗 白煙(誤認)・長万部
06/13 普通列車ブレーキ故障・小樽
06/14 列車無線故障・滝川
06/15 カシオペア ブレーキ点検・東室蘭ほか
06/15 普通列車 発電機破損・倶知安
06/15 追分駅信号故障
06/16 追分駅再び信号故障
06/16 手信号追分駅でSおおぞらATS切り忘れ自動停止
06/16 「4月以前に車掌居眠り」


脱線火災事故以降、JRに関する報道がなかったのは 6月3日の1日だけ。 5月27日以前を6月6~16日と同じ件数だけ遡ると昨年の12月まで戻ってしまいます。(但し3月はほぼ全て震災関連)

5月27日を境に、JRという会社が急におかしくなるハズはないので、結局ニュースというものは 「それを報じるか報じないか」 に多くを委ねられているに過ぎないことがよくわかります。(むしろ過熱報道で現場が萎縮し報告せず事件化、という形もあるでしょう)

ちなみにJR北海道の1日あたりの列車運行本数は 1291本(2010年4月)。 6月6日以降の車両トラブルが全て報じられていると仮定すると、この間の1列車あたりの “故障率” は 0.07% (9件/(1291本×10日)) 、1400回以上乗って初めて車両故障に遭遇する確率になります。

そうはいっても、あらゆる商売においてその根幹を支えるのが顧客からの “信用” であることは変わりません。 現場レベルの低下、それ自体は人口減(企業規模の縮小)からある意味当然ですが、それとは関係なく利用者の素直な視点として、JRのみならず、HACにしても過去の食中毒事件にしても、果ては全国チェーンの道内店のレベルにしても、コンプライアンス意識の相対的低さ、サービス三流とは昔からよく言われますが、道内(=小さな固定市場)ゆえのルーズさが無いとは言い切れません。
地元メディアは恥さらしとばかりに国賊(道賊?)バッシングに躍起ですが、これは決して他人ごとではなく、翻って広く道民性にまで関わる問題かもしれないということを頭に置いた上で報じてほしいものです。

もちろん、当の JR も今回を機に安全思想の見直し(人間を補う新技術も積極的に導入を)、現場と上層部の緊密化、それらにあたっては内外から広く人材を募り(可能ならば海外からも)、さらには経営方針から人事システムに至るまで踏み込んで刷新し(完全民営化が先かもしれませんが)、精神論を含めた悪い意味での日本的社風を一掃して会社組織を近代化させてほしいところです。

(6/18 04:33 更新)

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(6/19 18:23 追記)

国交省から出された改善命令は、簡単にいえば 「見過ごされていた部分」 や 「後回しにされていた部分」 への言及が中心。国交省の仕事の範疇としては当然ですが、それ以上は自助努力に任されることになります。 また整備面では調査団からナットの締め方への指摘。 技術継承の断絶が深刻な水準になっているように見受けられます。 このあたり、例えば JR他社との人的・技術的交流がこれまでどの程度なされていたのか気になります。


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エンジン破損 [北海道]

6日に伊達を走行中の283系で発生した白煙トラブル。

例年何件かは起こる 「白煙」 に取材ヘリまで飛ばした地元メディアの即物さには感心しましたが、実際に起きていたのは(当初見解の)オイル漏れではなく、エンジンシリンダー周りの破損でした。
それだけ聞けばまるでF1レースのような話です。(その位の使われ方でなければ壊れない)

石勝線の 「ピン脱落」 は前例がありましたが、今回のケースはJRも初めてのようで総研行きの案件になるようです。エンジンの設計の問題か、使われ方の問題か。今後の調査を見守るしかないでしょう。


余談になるかもしれませんが、キハ283系 という車両についての所感を。

○ デビュー当初、120km/hを超えたあたりから客室全体が盛大に振動する現象が見られたが、その後解決。製造ミスならば交換でいいが、強引に抑えたのならどこかにしわ寄せは来る。(但しこれについての情報はなし)

○ 281系と同系統のエンジンだが、騒音は甲高く車内騒音も聴感上煩い。変速段の多さにより高回転寄り? アイドル時も暖房強化のため比較的高回転。

○ 281系に比べ変速時間が短く、変速ショックは体感上大きい(→負荷はありそう)。最新の 261系も同様の変速制御(エンジン出力は 283系を上回る)。

もちろん、これらだけで “終息商品” の今後を論ずるつもりはありません。



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石勝線 列車火災 交信記録を読む / 疑問点まとめ [北海道]

5/31 時点でJR北海道からプレスリリースが読める状態になっていました(すみません)。交信記録もほぼ現状判る全部が含まれています。


 こちらの予想と違っていたのは

 ○ 停車位置が第1ニニウトンネルであることは双方分かっていた。

 という点。 であれば車掌氏は何の必要を感じて出口を確認しに行ってしまったか。その必然性がますます分からなくなるところですが、事態の切迫度を誤っていたのを前提として考えられるのは、

 ○ トンネルを抜けた先について(橋でないか等)、指令に情報を求めていなかった
 ○ 乗客を避難させるのだからその場所や経路を確認するのは当然、という思い込み
   (「この先の状況は分からないが逃げてください」 とは言えない?)

といった程度でしょうか。逆に “誘導してはいけない状況” を想定してみましたが今回のケースで思い当たるものは今のところありません。
結局出口からの無線連絡もできず大幅な時間ロスとなったわけですが、それを考慮しても 「数分なら」 という考えがあったように見受けられます (非常時で割り算などする暇はないでしょうが)。
いずれにしても目前の事態(火災)への認識の甘さからすべての対応ミスが始まっているのは疑う余地がありません。 (特に 「待つように」以後、22:09~13 にかけての、確認・再確認・エンジン停止などの指令との細かなやりとりは、状況判断よりも手順重視であったことを伺わせます。)


プレスリリースには全焼した車体各部の写真も掲載されています。客室が完全に焼け落ちていると同時に注目したいのは2号車(後ろから2両目)の半分から前方、先頭車までの 「床下の機器は焼けていない」。 火元の1号車エンジンから広がった炎と高熱は狭い単線トンネルの天井から前後の上層に広がり、各車の窓を溶かして客室を全焼させたのでは、と考えられます。 客室素材の耐火性の見直しはもちろんのこと、窓ガラスや通路の扉に延焼を防ぐ能力があれば、列車は全焼しなかった可能性もあります。


(6/09 05:36 追記)

○ 1号車で車販中の乗務員が炎を確認していたとの報道(映像あり。乗客「炎出ていた」)。

○ 神奈川新聞に乗客の証言。車外の方が生命の危険を感じるほどの煙だった模様。



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(以下初稿・加筆修正あり)


乗員と運転指令とのやりとりを一覧できるソースが見当たらないので、いくつか報道からまとめて並べてみました。つながりが不自然な部分もあるかもしれません。


21:56 緊急停止 指令に連絡
21:57 運転士「1-2号車機関停止」
22:00 車掌「1-3号車の床下から煙」
22:00 指令 停止位置を確認
22:01 指令「列車をトンネル外へ」 【火災発生を懸念】
22:03 指令「乗客を6-4号車へ」
22:04 指令「第1ニニウTか」 運転士「その通りだと思う」
22:05 車掌「列車動かない」「煙がひどい」
22:06 指令「大至急車内放送で誘導を」
22:07 車掌「歩いて避難させたい」 【避難の必要性は認識】
22:07 指令「ドアを開けないように」
22:08 運転士が乗客を前車両へ誘導開始 (避難前 乗員最後の指示)
22:09 指令「1-3号車に乗客残っていないか再確認を」
22:10 車掌「残っていない」
22:10 指令「1-3エンジン停止確認」
22:10 運転士「モニター消え把握できない」 (事態悪化)
22:10 指令「全エンジン停止を」(車内停電?)
22:10 運転士 先頭車機関を始動させるため下車
22:10 車掌「かなりすごい煙で息ができない」
22:11 指令「乗客を先頭車へ」
22:11 (運転士「全部止まっている」(30日毎日記事))
22:11頃 車掌が列車を離れる
22:13 指令「先頭車だけ始動を」 (1両だけで走行可? 電源確保?)
22:14 交信途絶
22:15 運転席の火災等の警報装置作動(事故直後は作動せず)
22:18 運転士 火災表示灯点滅・ブザー音聞く
22:20 車掌から運転士へ「出口確認後、運転士が誘導を」

22:29 同乗社員「トンネル内に煙充満。車内にもかなりの煙」
22:30頃 車掌戻る
同じころ  乗客自主避難始める
22:30 指令「乗客移動させたか」
22:30 同乗社員「前も後ろも煙が充満。火災は発生していない」
22:30 指令「停止位置は」 社員「トンネル中央部」
22:36頃 車掌に加え運転士も避難誘導へ
22:45頃 全員下車(乗員最後を確認)

23:27 全員トンネル外に脱出(プレス)(30日毎日記事「全員下車」)
24:00 全員トンネル外に脱出(30日記事)
24:02 警察からJRへ「火災」の連絡


少なくとも停車11分後(22:07)までには 「乗客を避難させるべき状況」 であることを車掌氏は認識してたようです。 一方指令側も停止後5分後(22:01)には既に火災の可能性を考えていたことになります。 にもかかわらずここまで避難開始を遅らせてしまったのは何か。

問題は 「火災という事実の確認」 よりも、現場と指令、双方の 「火災」 そのものへの認識の甘さであるように思います。 難燃化への過信、仮に火災であっても簡単には燃え広がらないという先入観はなかったでしょうか。 過去のトンネル火災からの教訓は「煙」でしたが、それは鉄道関係者ならば誰もが知る常識でしょう。 その後車体は簡単には燃えなくなった。ならば煙も以前ほどの脅威ではない、という潜在意識です。
気動車であれば車体は燃えなくても油は盛大に燃えます。近年の樹脂多用の車両では思いもよらないリスクもあるかもしれません。少なくともそうした油断がなければ、いったん火災が疑われた段階で1分1秒を惜しんでトンネル外への誘導へと移れたはずです。 緊急時にもかかわららず指令との交信が途絶えるような行動もとられなかったでしょう。

結果、乗客の前車両への誘導(22:08)の後は乗員から乗客へのインフォメーションは途絶え、22:30頃の自主避難までのいわば無駄な20分間、乗客は危険な状況下に留め置かれました。



~~ 新たに問題点・疑問点など ~~

以下、新たに思い当たる疑問点等を簡単に。
前記事と重複あり。随時更新。


非常停止した位置

    火災でなくてもトンネル内での停車は避ける
      (手前の清風山信号場内で停車できればベストだった)
    信号場入口のポイント通過後に減速か(120km/h)
    すぐ先の長大トンネル(新登川)に入らずに済んだのは偶然か

    運転指令は 「清風山通過直後」 という停止位置を把握していなかったのか
      (車掌の無用な出口確認を防げた可能性)

    → 停止位置は把握していた


役立たなかった火災表示

    火災検知装置はある(一部に温度ヒューズ)
    温度ヒューズも自動消火装置もエンジン周辺 燃料漏れ火災には不十分
    「認知・伝達」への依存。 オンラインで共有されない火災検知


甘いマニュアルの放置

   「火元確認」という文言
        煙で見えない事態(トンネル等)を想定していない
    JR他社と異なるマニュアル文言(言い回し) 異なる理由は?
    趣旨は同じでも言い回しの差異だけで危機に陥った初めての事故

    おそらく1970年代以降、大きな見直しなし
        トンネル内停止もありうるという想定をしていない?
        乗客が指示に従わない想定をしていない


運転指令と現場との主従関係

    現場を優先(指令は現場決断の補助に徹する)という局面の想定がない
    非常時における現場と本部の関係・・・鉄道事業者に限らない課題

    → 常に指令優先、という規則ではない?


現場と指令 優先の分岐点

    「より危険な」状況が想定できた(確認できた)側に主導権を与える柔軟性
    (現場:危機を目前に見る / 指令:津波の接近 など)


火災確認以前からあった避難必要の認識

    火災確認の遅れ → 避難の必要性認識の遅れ
     よりも、
    避難の必要性は認識 → 手続き順守と無用な脱出路確認で避難遅れ


通信途絶と避難遅れの関連性

    前車両への乗客誘導後、
    乗員の長時間の車外確認による乗客誘導の遅れ・通信途絶


指令の空白?

    「全エンジン停止を」 の後の指示がない(報道上)
    指令側は事態をどう見立てていたのか(煙充満後の予測・危機進行の早さ)

    → 「先頭車へ避難を」 が自主避難前最後の指示(その後どうしようと考えていたのか)


運転席モニターのダウンと火災の関連

    非常停止後14分でモニターがダウン(危機拡大を認識したはず)
    車内放送など電気系の火災耐性 (乗員の無線は独立)
    車内照明のダウンで乗客が危機感を強める。実際の避難にも影響


乗客の「判断」

    煙、停電(エンジン停止?)により乗客は追い込まれた(と予想)

    → 車内よりも車外の方が煙が濃かった(神奈川新聞)
      (案内の停滞が自主判断を強いた一番の可能性)

    車外がより安全である保証はない(指令側の視点)が乗客にその余裕はない
    乗客へのインフォメーションが長く途絶えたため(乗員の下車。
       焼損による影響は不明)乗客を誘導(制御)できなかった。
    非常コックがある以上、乗客を留める前提のマニュアルは想定不足


    後方車両の乗客は炎を認識 (6/08 報道)
    前方へ移動した段階で運転士や車掌に伝える乗客は誰もいなかったのか
     (販売員「移動指示=知っていると思っていた」 乗客も同じか)
    乗客間で 「炎」 の情報はどの程度広がって(共有されて)いたのか



難燃材でも白煙? 熱耐性

    車体は燃えなくても軽油は燃える
     (素で軽油を燃やした場合の煙の出方はわからない)

    → 燃料が 「亀裂から霧状になって噴出、高温のエンジンに触れ引火」(JR予想)
      (ディーゼル燃料は引火点が高く、単独ではほぼ発火しない)


    難燃材自体は発火しなくても熱で溶ければ炎の拡大を助長する可能性

    大量の白煙を出すような素材は使われていないのか

    氷塊事故対策としてのポリカーボネート窓(外側)の耐熱性
     (炎に包まれた場合乗客を守れるのか)

    外窓と通路の扉に強力な耐火性があれば全焼しなかった可能性


部品脱落のリスク

    全鉄道車両に共通する脱線リスク
    燃料タンクの強度不足 (最重要)
    脱落による二次被害を原理的に防ぐという発想がない (“成熟技術”の見直し)


推進軸の脱落防止ロッド?

    のようなものが見える(報道資料)
    写真を見る限り推進軸を下から覆うようにあるが、片側の脱落だけなら支えられる?

    → 推進軸よりも台車側・減速機(デフにあたる位置)の固定状況が発端



※ 余談 (放送関係者向け?)

    各固有名詞のアクセント

    特急 「おおぞ『ら』」
    (↓ 転じて)
    特急 「スーパー『お』おぞら」
        「おお『ぞ』ら」 は一般名詞

    釧路 「く『し』ろ」
    帯広 「おびひ『ろ』」
     (東京の年配者に多い 「お『び』ひろ」 ではない)
    新夕張 「しん『ゆ』うばり」
    夕張 「『ゆ』うばり」 (「ゆうば『り』」 はメロンだけ)
    富良野 「ふ『ら』の」
     (「『ふ』らの」・「ふら『の』」、ではない)


(06/01 01:58 更新)


  タイトル変更
   「石勝線 列車火災 要点ボード」
  →「石勝線 列車火災 交信記録を読む / 疑問点まとめ」


(06/09 05:36 更新)


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石勝線 列車火災にみる問題点 [北海道]

鉄道事故で最も怖いものの一つがトンネル内での火災。 その火災事故が昨夜、石勝線で起きてしまいました。 場所は占冠ニニウ。 釧路発札幌行「スーパーおおぞら14号」が第1ニニウトンネル(685m) 進入前に脱線し、トンネル内で停止。前後して火災が発生し乗客は脱出、徒歩でトンネルを抜けた。非常に幸運なことに、死者は発生しなかった・・・

特急おおぞらについていえば、1994年の新得~新狩勝間での強風による脱線事故以来の重大事故。 石勝線単体についていえば、おそらく乗客に負傷者がでた「脱線・火災」としてはは1981年の新線開業後初めての大事故でしょう。(氷塊によるガラス破損が原因の負傷事故を除く)

かなり複合的な要因によって発生した火災事故ですので、これは事故としても事件としても、また技術的な問題としても、今後各方面に相当尾を引くことになると思います。


現時点での疑問点をいくつかまとめてみます。


1. 車掌の意識

乗務していたのはベテランの車掌さんとのことですが、事故時点で列車がどこを走行していたのか認識していなかった可能性があります。 停車後に車掌が列車を降りてトンネルの出口を確認しに行ってしまったらしいですが、それは停車したトンネルの長さを把握していなかったということでしょう。 石勝線というのはいわば人口希薄地帯を一気に抜けるためにトンネルと高架が連続する路線で、少なくとも乗客にはいま列車がどこを走っているのかは全く分からないという路線です。まして夜間です。
それでも長大トンネルというのはある程度数が限られていて、今回の現場の前方(西側)には新登川トンネル(約5km)、後方(東側)には鬼峠トンネル(約4km)という長大トンネルがあります。その間にある3つの小トンネルのうちの一つが第1ニニウトンネルです。 車掌氏に「少なくとも長大トンネルではない」という意識があれば、重大な火災が発生(という意識があったかどうかがこれから問題になるでしょう)している時点で列車を離れることなく、より早く乗客の誘導ができていたかもしれません。


2. マニュアルの不備

事故発生時、後方の車両から火が上がったので乗客を前方の車両へと誘導したようですが、それでは間に合わず結果として乗客自身の判断で下車して避難しました。 ただ、煙に巻かれないために 「どのように」 逃げるべきなのか、乗客はもちろん事業者も知らないでしょう。
「異常な振動」を伴う一部車両の脱線が発生した後、一部では乗客が運転室へ列車を止めるように連絡したという報道もありますが、不運にも列車はトンネルの中で止まってしまいました。そこで火が燃え広がったとき、乗客はどこへ逃げるべきか。 風上に逃げるのが自然でしょうが、当時はおそらくほぼ無風。そもそも煙が充満した中では全く分からないでしょう。
ちなみに、列車の灯りは全て消え、完全な真っ暗闇となっていたようです。 前か後ろかも分からなかったことでしょう。(ちなみに完全な暗黒状態では人間は平衡感覚を失い、真っ直ぐ歩くことすら出来なくなります)
「夜間」、「脱線しトンネル内停止(走り抜け不可)」、「油火災で煙充満」、そして「狭い単線トンネル」。短いトンネルだったという唯一の幸運を除き、これでもかと悪条件が重なった事故に対して、どう対応すればいいのか。JR北海道は青函トンネルについては毎年火災を想定した訓練をやっていますが、それ以外で聞くのはせいぜい脱線事故の復旧訓練くらいです。これからは(原発事故でいうところの)いわばシビア・アクシデントを想定したマニュアルとその訓練は絶対に必要でしょう。


3. トンネルの不備

トンネルに「誘導灯を」という乗客が言葉が報じられてますが、コストの掛からない範囲での誘導灯の整備が地方路線でも求められるかもしれません。非常時だけ点滅する高輝度LEDのようなものが安く整備できれば。 そして何らかの照明が確保されている前提で、トンネル内の壁面に出口までの距離が誰の目にもすぐに分かるような表示も必要でしょう。
車掌が列車を離れたり、長大トンネルで逆方向へ進んでしまうような判断ミスを防ぐことにもなります。


4. 車両の不備

今回の事故で、ディーゼル列車の安全基準を一から見直さざるを得なくなるかもしれません。 脱線・火災の経緯が判明するのはこれからですが、仮に線路側に問題があって脱線したとしても、床下の走行機器が破損して火災に至ったという事実は変わりません。避難後、放置された列車はそのまま全焼したそうです。
同型車については過去に燃料タンクに穴が開いたトラブルがあったと記憶していますが、燃料を積んで走るというそれ自体のリスクが過小評価されていたかもしれません。
燃料のタンクにしろ配管にしろ、破損すれば火災の可能性が一気に高まります(潤滑オイルのトラブルで白煙、というケースもありますが)。列車では基本的に床下の艤装はむき出し。 電車では雪対策としてカバーで覆い尽くす例もありますが、ディーゼルではどうでしょうか。車輪とエンジンを接続するためには覆いきれない部分もあるでしょうし、冷却面や重量の問題もあるかもしれません。それでも外からの破損を防ぐため、そして破損をしても落下させずに大事故を防ぐ、そのためのカバーという考え方は必要ではないでしょうか。


5. 石勝線という路線

  ○ 非電化路線である (火災リスクが高い)
  ○ 単線トンネルである (狭く煙に巻かれやすい)
  ○ 長大トンネルが多い (火災になると逃げ遅れる可能性)
  ○ 高架橋が多い (脱線すれば落下の可能性)
  ○ 人口希薄地帯である (救援が遅い)
  ○ ほぼ無人化路線である (救援が遅い)

  ○ 冬は極寒である (追記)


石勝線という路線は、青函トンネル以上に北海道内で最も高い安全性が求められる路線だと思います。 そこで発生した今回の脱線と火災は、他の主要路線で起きた事故以上に深刻に考えなくてはいけません。


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追記: 推進軸が脱落して脱線に至ったという発表。 鉄道はもちろん大型トラックでもまれに聞くケースですが、やはり壊れても落とさない設計というのがあっていいように思います。

それにしても占冠の火災で上富良野や芽室の消防にまで応援を求めるとは。やはり石勝線で何か起きると簡単にはいかないようです。ちなみにニニウ地区の先は本当にまともな道路すら無い、いわば救援困難地帯です。


追記: 運転指令とのやり取りに相当な時間をかけてしまっていたという情報。 ここでもポイントとなるのは 「乗員がどの時点で火災を認識したかどうか」 のように思います。そしてその火災をよくある 「白煙が出ておしまい」 程度のものと考えてはいなかったか。 避難困難になるほど燃え広がる(煙が広がる) 火災は想定できなかったのかどうか。これまで現場にあったかもしれない常識をまずは疑って検証・対策を考えてほしいものです。

追記: “同型車” は キハ283系 か 281系か、記憶が不正確です。

(23:53更新)


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追記(5/29): 

ポイントが整理されてきました。 まず、車掌氏は最後まで自らの目で火災と認識するに至らなかった模様。脱線の認識についてはわかりませんが、「脱線(もしくは走行不能)」というその段階で事態を決めてかかっていた(それ以後を想像しなかった)のかもしれません。 白煙をエンジンの排気を勘違いする可能性は単線トンネル内であったことも考えれば分からなくもない。 一方車体側の問題はまず “推進軸”。ただこれを 「整備ミス」 という結論で終わらせてしまうと、いずれ同じことが繰り返されるかもしれません。

■今後の安全対策もろもろ

それにしても火災の有無を目視でしか確かめられないというのは、ことこの時代においてはもう少し何とかならないものかと、今更ながら思います。
鉄道車両に難燃材が用いられるようになり、トンネルで一気に延焼して死者多数とった事故は起きなくなりましたが、燃料を積んで走るディーゼル車については車体の不燃化だけでは不十分ではないかというところまで議論が広がるのを期待します。たとえば床下の各所に温度センサーを設置し、さらに油漏れの検知もできるようにして、乗員の判断によらず火災(の危険)を通知できるような仕組みがあっていいように思います。(そういえば自動消火装置は今回役に立たなかったのだろうか)

推進軸については、やはり各所で振り子式台車との関連を指摘する声があるようですが、こればかりは当事者でもないので分からず。確かに左右に動くエンジン(床面)と動かない台車とを結ぶのですから可動部は複雑になりますが、一方で キハ283系 がディーゼル車としておそらく国内で最も厳しい運用(距離も速度も)をされている車両のひとつであるのも確かで、他の一般車両と同じ基準では設計・保守されていないであろうこともまた想像できます。JR北海道で開発されているとされる次世代の車体傾斜車両では床面の移動量は小さくなっているようですが、今回の事故が将来の高速化への足かせになってしまわないか心配になります。(振り子車の推進軸を不要にするためには電気(自動車)化しかない。シリーズハイブリッドか、燃料電池車か。JR北海道が開発中のMAハイブリッドには推進軸がある)

またこの事故では、車内の照明が消えてしまいました。延焼とともに電気系統がダウンしたのかもしれませんが、これはもっと重視されていいと思います。乗客の生命に直接関わります。配線がダメージを受けてもこの部分だけは守るという設計思想がほしい。照明内部には電池内蔵の非常灯を、また放送系統も緊急時(断線時)には1両単位で火災検知器と連動した自動放送くらい出来る設計であってほしい。

もうひとつ気になるのは、せっかく乗客を前方の車両へ移動させたのに、列車を切り離して動かすことが出来なかったこと。「動かそうとしたが動かなかった」 という報道(乗客の移動との前後関係はわからない)ですが、脱線で動かなかったのか、電気系統がダウンして動かなかったのか。 脱線だけが原因であれば切り離せばいいだけのように思えますが、そもそも非常時に切り離すような訓練はしていたのか(定められた手順があるのか)、車両側は迅速に作業できるような仕様なのか。 もし現状出来ないのであれば、ソフト面を含めて改めてほしい部分です。


※記事タイトル変更
「石勝線 列車火災 現在の問題点」 → 「石勝線 列車火災にみる問題点」

(5/30 05:10更新)



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